失ってはじめて、その重要性に気づくことがあるように、例えば大切な人の不在によって、逆説的に照らし出されるものも在るのかもしれない。田野の絵画は、人が触れ合うことで織りなされる印象の残渣を、木漏れ日にも似た心象的な光に変換して、画面に定着することで成されている。
音楽を良質な機器で再生すると、調和を保ちながらも楽器それぞれの鳴りを分離させ聴き分けることができるが、彼の絵画にもそのような解像感が認められる。描き始めのような色彩の鮮度を保ちながら、それを鑑賞者に光として知覚させるために、筆の軌跡には細心の注意がはらわれ、同時に複雑な構成を支えてもいる。